1968年イギリスグランプリ

イギリス 1968年イギリスグランプリ
レース詳細
1968年F1世界選手権全12戦の第7戦
ブランズ・ハッチ (1960-1975)
ブランズ・ハッチ (1960-1975)
日程 1968年7月20日
正式名称 XXI RAC British Grand Prix
開催地 ブランズ・ハッチ
イギリスの旗 イギリスイングランドの旗 イングランド) ケント州
コース 恒久的レース施設
コース長 4.265 km (2.650 mi)
レース距離 80周 341.200 km (212.012 mi)
決勝日天候 晴(ドライ)
ポールポジション
ドライバー ロータス-フォード
タイム 1:28.9
ファステストラップ
ドライバー スイスの旗 ジョー・シフェール ロータス-フォード
タイム 1:29.7 (42周目)
決勝順位
優勝 ロータス-フォード
2位 フェラーリ
3位 フェラーリ

1968年イギリスグランプリ (1968 British Grand Prix) は、1968年のF1世界選手権第7戦として、1968年7月20日ブランズ・ハッチで開催された。

80周で行われたレースはジョー・シフェールが勝ち、自身及びスイス人ドライバーにおけるF1初勝利を挙げた。シフェールの勝利により、プライベーターのロブ・ウォーカー・レーシングチームは通算9勝目でかつ最後の勝利を挙げた。

背景

この年は4月にジム・クラークがF2で、5月にマイク・スペンス(英語版)インディ500(英語版)の練習走行で、6月にルドビコ・スカルフィオッティヒルクライムで事故死したのに続き、前戦フランスグランプリジョー・シュレッサーも事故で亡くなり、4ヶ月続けて現役F1ドライバーが命を落とした[1]。イギリスのファンはクラークとスペンスの2人を失ったが、グラハム・ヒルがドライバーズランキング首位で本レースを迎え、参加した20台のうちヒルを含む7人のイギリス人ドライバーを応援した[2]

各チームとも可能な限り多くのダウンフォースを得るため、マシンに巨大なリアウイングが装着された[2][3]ホンダも本レースからRA301にウイングを装着した[4]

エントリー

クーパーは、地元イギリス出身のロビン・ウィドウズ(英語版)をスポット起用し[2]、レギュラーのルシアン・ビアンキアルファロメオスポーツカーレース用V8エンジンを搭載したT86Cを試走させた[5]。エンジンの問題により欠場が続いたイーグルがサーキットに戻ってきた[2]

エントリーリスト

チーム No. ドライバー コンストラクター シャシー エンジン タイヤ
イギリスの旗 ブルース・マクラーレン・モーターレーシング 1 ニュージーランドの旗 デニス・ハルム マクラーレン M7A フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
2 ニュージーランドの旗 ブルース・マクラーレン
イギリスの旗 ブラバム・レーシング・オーガニゼーション 3 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム ブラバム BT26 レプコ 860 3.0L V8 G
4 オーストリアの旗 ヨッヘン・リント
イタリアの旗 スクーデリア・フェラーリ SpA SEFAC 5 ニュージーランドの旗 クリス・エイモン フェラーリ 312/68 フェラーリ 242C 3.0L V12 F
6 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス
日本の旗 ホンダ・レーシング 7 イギリスの旗 ジョン・サーティース ホンダ RA301 ホンダ RA301E 3.0L V12 F
イギリスの旗 ゴールドリーフ・チーム・ロータス 8 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス 49B フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
9 イギリスの旗 ジャッキー・オリバー
イギリスの旗 オーウェン・レーシング・オーガニゼーション 10 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス BRM P133 BRM P142 3.0L V12 G
11 イギリスの旗 リチャード・アトウッド P126
12 イギリスの旗 トニー・ランフランチ 1
イギリスの旗 マトラ・インターナショナル 14 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート マトラ MS10 フォードコスワース DFV 3.0L V8 D
イギリスの旗 クーパー・カー・カンパニー 15 イギリスの旗 ビック・エルフォード クーパー T86B BRM P142 3.0L V12 F
16 イギリスの旗 ロビン・ウィドウズ T86
17 ベルギーの旗 ルシアン・ビアンキ 2 T86C アルファロメオ T33 3.0L V8 G
フランスの旗 マトラ・スポール 18 フランスの旗 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ MS11 マトラ MS9 3.0L V12 D
スイスの旗 シャルル・ホーゲル・レーシング 19 スイスの旗 シルビオ・モーザー ブラバム BT20 レプコ 620 3.0L V8 G
イギリスの旗 レグ・パーネル・レーシング 20 イギリスの旗 ピアス・カレッジ BRM P126 BRM P142 3.0L V12 G
アメリカ合衆国の旗 トム・ジョーンズ 21 アメリカ合衆国の旗 トム・ジョーンズ 1 クーパー T86 マセラティ 9/F1 3.0L V12 G
イギリスの旗 ロブ・ウォーカー/ジャック・ダーラッシャー・レーシングチーム 22 スイスの旗 ジョー・シフェール ロータス 49B フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
スイスの旗 ヨアキム・ボニエ・レーシングチーム 23 スウェーデンの旗 ヨアキム・ボニエ マクラーレン M5A BRM P142 3.0L V12 G
アメリカ合衆国の旗 アングロ・アメリカン・レーサーズ 24 アメリカ合衆国の旗 ダン・ガーニー イーグル T1G ウェスレイク 58 3.0L V12 G
ソース:[6]
追記
  • ^1 - エントリーのみ[7]
  • ^2 - マシンが準備できず[7]

予選

ヒルがチームメイトの2番手ジャッキー・オリバーに0.5秒差を付けてポールポジションを獲得し、ロータス勢は3番手のクリス・エイモンフェラーリ)とともにフロントローを占めた[注 1]ジョー・シフェールロブ・ウォーカーのロータス)はヨッヘン・リントブラバム)とともに2列目を、3列目はダン・ガーニー(イーグル)、ジャッキー・スチュワートマトラ・インターナショナル)、ジャック・ブラバム(ブラバム)が占めた[2]

結果

順位 No. ドライバー コンストラクター タイム グリッド
1 8 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス-フォード 1:28.9 - 1
2 9 イギリスの旗 ジャッキー・オリバー ロータス-フォード 1:29.4 +0.5 2
3 5 ニュージーランドの旗 クリス・エイモン フェラーリ 1:29.5 +0.6 3
4 22 スイスの旗 ジョー・シフェール ロータス-フォード 1:29.7 +0.8 4
5 4 オーストリアの旗 ヨッヘン・リント ブラバム-レプコ 1:29.9 +1.0 5
6 24 アメリカ合衆国の旗 ダン・ガーニー イーグル-ウェスレイク 1:30.0 +1.1 6
7 14 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート マトラ-フォード 1:30.0 +1.1 7
8 3 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム ブラバム-レプコ 1:30.2 +1.3 8
9 7 イギリスの旗 ジョン・サーティース ホンダ 1:30.3 +1.4 9
10 2 ニュージーランドの旗 ブルース・マクラーレン マクラーレン-フォード 1:30.4 +1.5 10
11 1 ニュージーランドの旗 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 1:30.4 +1.5 11
12 6 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス フェラーリ 1:31.0 +2.1 12
13 10 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス BRM 1:31.6 +2.7 13
14 18 フランスの旗 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ 1:31.6 +2.7 14
15 11 イギリスの旗 リチャード・アトウッド BRM 1:31.7 +2.8 15
16 20 イギリスの旗 ピアス・カレッジ BRM 1:32.3 +3.4 16
17 15 イギリスの旗 ビック・エルフォード クーパー-BRM 1:33.0 +4.1 17
18 16 イギリスの旗 ロビン・ウィドウズ クーパー-BRM 1:34.0 +5.1 18
19 19 スイスの旗 シルビオ・モーザー ブラバム-レプコ 1:35.4 +6.5 19
20 23 スウェーデンの旗 ヨアキム・ボニエ マクラーレン-BRM 1:36.8 +7.9 20
ソース:[8][9]

決勝

3戦連続でスタート時に小雨が降り、オリバーがヒルとシフェールをリードした。先頭を走るロータスは煙に巻かれ、4周目にオリバーはヒルに抜かれた。煙の道ができていたにもかかわらず、オリバーは2位にとどまった。しかし、27周目にヒルがリアサスペンションの故障でリタイアしたため、オリバーが首位に戻った。その後方でシフェールはエイモンと2位争いを繰り広げたが、オリバーからは徐々に離されていった[2]

イギリス人のオリバーが首位を快走して地元ファンを喜ばせたが[1]、44周目にトランスミッションが壊れてマシンを止めるとシフェールが首位に立ち[2]、プライベーターのロブ・ウォーカーが1961年ドイツグランプリスターリング・モス以来7年ぶりの勝利を手にした[1]。フェラーリのエイモンはレース終盤にタイヤの摩耗で優勝を逃し2位、1周遅れでチームメイトのイクスが3位となった。エイモンは「もしもマシンの後尾にもっと大きなウイングを付けていたら、フェラーリは勝てたに違いない」と語っている[10]。その一方でジョン・サーティースホンダ・RA301がレース途中でウイングの支柱にヒビが入り、34周目にウイングを吹き飛ばしてしまうアクシデントもあり(サーティースはその後、オーバーステアと格闘することになったが5位に入賞)[11]、ウイングの巨大化は安全性に疑問を投げかけることになった[12]

結果

順位 No. ドライバー コンストラクター 周回数 タイム/リタイア原因 グリッド ポイント
1 22 スイスの旗 ジョー・シフェール ロータス-フォード 80 2:01:20.3 4 9
2 5 ニュージーランドの旗 クリス・エイモン フェラーリ 80 +4.4 3 6
3 6 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス フェラーリ 79 +1 Lap 12 4
4 1 ニュージーランドの旗 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 79 +1 Lap 11 3
5 7 イギリスの旗 ジョン・サーティース ホンダ 78 +2 Laps 9 2
6 14 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート マトラ-フォード 78 +2 Laps 7 1
7 2 ニュージーランドの旗 ブルース・マクラーレン マクラーレン-フォード 77 +3 Laps 10
8 20 イギリスの旗 ピアス・カレッジ BRM 72 +8 Laps 16
Ret 4 オーストリアの旗 ヨッヘン・リント ブラバム-レプコ 55 燃料漏れ 5
Ret 10 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス BRM 52 エンジン 13
NC 19 スイスの旗 シルビオ・モーザー ブラバム-レプコ 52 規定周回数不足 19
Ret 9 イギリスの旗 ジャッキー・オリバー ロータス-フォード 43 トランスミッション 2
Ret 16 イギリスの旗 ロビン・ウィドウズ クーパー-BRM 34 イグニッション 18
Ret 8 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス-フォード 26 ハーフシャフト 1
Ret 15 イギリスの旗 ビック・エルフォード クーパー-BRM 26 エンジン 17
Ret 18 フランスの旗 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ 11 エンジン 14
Ret 11 イギリスの旗 リチャード・アトウッド BRM 10 ラジエーター 15
Ret 24 アメリカ合衆国の旗 ダン・ガーニー イーグル-ウェスレイク 8 燃料ポンプ 6
Ret 23 スウェーデンの旗 ヨアキム・ボニエ マクラーレン-BRM 6 エンジン 20
Ret 3 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム ブラバム-レプコ 0 エンジン 8
ソース:[13]
ファステストラップ[14]
ラップリーダー[15]
節目となった記録

第7戦終了時点のランキング

ドライバーズ・チャンピオンシップ
順位 ドライバー ポイント
1 イギリスの旗 グラハム・ヒル 24
2 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス 20
3 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート 17
4 ニュージーランドの旗 デニス・ハルム 15
5 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス 10
ソース: [16]

コンストラクターズ・チャンピオンシップ
順位 コンストラクター ポイント
1 イギリスの旗 ロータス-フォード 38
1 2 イタリアの旗 フェラーリ 25
1 3 イギリスの旗 マクラーレン-フォード 22
4 フランスの旗 マトラ-フォード 20
5 イギリスの旗 BRM 17
ソース: [16]

  • : トップ5のみ表示。前半6戦のうちベスト5戦及び後半6戦のうちベスト5戦がカウントされる。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 本レースのスターティンググリッドは3-2-3。
  2. ^ 決勝をスタートした回数。

出典

  1. ^ a b c (林信次 1995, p. 61)
  2. ^ a b c d e f g “British GP, 1968”. grandprix.com. 2019年9月18日閲覧。
  3. ^ (林信次 1995, p. 56-58)
  4. ^ (中村良夫 1998, p. 258)
  5. ^ (林信次 1995, p. 71)
  6. ^ “Britain 1968 - Race entrants”. STATS F1. 2019年9月18日閲覧。
  7. ^ a b “Britain 1968 - Result”. STATS F1. 2019年9月18日閲覧。
  8. ^ “Britain 1968 - Qualifications”. STATS F1. 2019年9月18日閲覧。
  9. ^ “Britain 1968 - Starting grid”. STATS F1. 2019年9月18日閲覧。
  10. ^ (アラン・ヘンリー 1989, p. 241)
  11. ^ (中村良夫 1998, p. 259)
  12. ^ (林信次 1995, p. 58)
  13. ^ “1968 British Grand Prix”. formula1.com. 2015年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年9月26日閲覧。
  14. ^ “Britain 1968 - Best laps”. STATS F1. 2019年9月18日閲覧。
  15. ^ “Britain 1968 - Laps led”. STATS F1. 2019年9月18日閲覧。
  16. ^ a b “Britain 1968 - Championship”. STATS F1. 2019年3月13日閲覧。

参照文献

  • Wikipedia英語版 - en:1968 British Grand Prix(2019年3月13日 22:42:20(UTC))
  • Lang, Mike (1982). Grand Prix! Vol 2. Haynes Publishing Group. pp. 72–73. ISBN 0-85429-321-3 
  • 林信次『F1全史 1966-1970 [3リッターF1の開幕/ホンダ挑戦期の終わり]』ニューズ出版、1995年。ISBN 4-938495-06-6。 
  • 中村良夫『F-1グランプリ ホンダF-1と共に 1963-1968 (愛蔵版)』三樹書房、1998年。ISBN 4-89522-233-0。 
  • アラン・ヘンリー『チーム・フェラーリの全て』早川麻百合+島江政弘(訳)、CBS・ソニー出版、1989年12月。ISBN 4-7897-0491-2。 

外部リンク

  • Britain 1968 - STATS F1
  • British GP 1968 - grandprix.com
前戦
1968年フランスグランプリ
FIA F1世界選手権
1968年シーズン
次戦
1968年ドイツグランプリ
前回開催
1967年イギリスグランプリ
イギリスの旗 イギリスグランプリ 次回開催
1969年イギリスグランプリ