フランク・S・ベッソン・ジュニア大将級兵站支援艦
フランク・S・ベッソン・ジュニア大将級 兵站支援艦 | |
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基本情報 | |
種別 | 兵站支援艦 (LSV) |
命名基準 | アメリカ合衆国陸軍の軍人 |
運用者 | アメリカ陸軍 |
就役期間 | 1988年 - 現在 |
建造数 | 8隻 |
要目 | |
軽荷排水量 | 1,612 t |
満載排水量 | 4,199 t |
全長 | 83 m |
最大幅 | 18.28 m |
吃水 |
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主機 | GM EMD 16-645-E2ディーゼルエンジン×2基 |
推進器 | |
出力 | 3,900 bhp |
電力 | 599 kW |
速力 | 12ノット |
航続距離 | 5,500海里 (12kt巡航時) |
燃料 | 524 t |
乗員 | 士官6名+下士官兵24名 |
兵装 | なし |
レーダー | ブリッジマスターE 航法用 |
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フランク・S・ベッソン・ジュニア大将級兵站支援艦(英語: General Frank S. Besson-class Logistics Support Vessels)は、アメリカ陸軍輸送科が運用する兵站支援艦(LSV)の艦級[1][2]。アメリカ陸軍が保有する艦艇としては最大のものである[3]。
来歴
アメリカ陸軍の船艇のうち、上陸用舟艇(LCM・LCU)や兵站支援艦(LSV)は陸軍輸送科によって運用されている[2]。このうち兵站支援艦(LSV)に相当するのが本級であり、揚陸後方支援(Logistics Over The Shore, LOTS)[4]や低脅威度地域における兵站活動への投入が想定されていた[1][3]。
陸軍輸送科では、もともと、旧式化した汎用揚陸艇(LCU)を更新するために舟艇24隻の建造を計画していた[5]。しかし検討の過程で、「ジョン・U・D・ページ」および「バンカー」の成功を背景として、これら2隻および陸軍保有の貨物船の代替用として、より大型の艦を導入することとなった[6][注 1]。まず1985年8月に4隻がノーフォーク造船所にされたものの、入札内容の曖昧さが問題になり、同年10月にキャンセルされた[5]。その後、1986年9月19日に改めて4隻が発注された[2]。
設計
設計面では、オーストラリアのビーチング対応型RO-RO船「フランセス・ベイ」を元にしており、このため商船構造として民間の基準で建造された。同船と同様、戦車揚陸艦のように艦首に道板(バウ・ランプ)を有する一方、艦尾にも道板を有しており、RO-RO船としての性格も残されている。艦首尾の道板はいずれも幅8.23メートルであり、長さはそれぞれ15.2メートルと4.87メートルである[2]。1:30の勾配の海岸部にも擱座着岸を行うことができる[1]。その直後の車両甲板は975平方メートルの面積を確保して、816〜1,815メートルトンの車両ないし物資を搭載できる。M1エイブラムス15両を搭載でき、コンテナ搭載能力としては48 TEUとされている[2]。
その後、2001年度から2003年度計画で建造された7・8番艦は、全長を12m延長した発展型とされている。車両甲板は10,500 sq ft (980 m2)と大差ないが、搭載量は2,000メートルトン、50 TEUとされており、主力戦車24両を搭載できる。また艦首には、道板に加えて観音開きの門扉が設置され、道板は23.16×5.49メートルの分節状のものとなった。9番艦の建造も計画されたが、2013年現在実現していない[2]。
また1992年4月には、アメリカの軍事援助として、フィリピン海軍向けにバコロド・シティ級(英語版)2隻が建造された。これらは基本的に本級と同じ設計であるが、艦尾ランプを持たない代わりにヘリコプター甲板を備え、また兵員150名用の居住区を有する点で異なっている[8]。
- 艦首側の道板を半ば下ろした状態。
- 海軍のドック型揚陸艦の艦尾門扉に道板を下ろし、車両を移動させている状態。
- 左舷後方からの艦影。
- 艦尾側の道板を半ば下ろした状態。
- 艦首に門扉を追加した7番艦
同型艦一覧
運用者 | # | 艦名 | 進水 | 就役 |
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アメリカ陸軍 | LSV-1 | フランク・S・ベッソン・ジュニア大将 USAV General Frank S. Besson, Jr | 1987年6月 | 1988年1月 |
LSV-2 | ハロルド C. クリンガー3等准尉 USAV CW3 Harold C. Clinger | 1987年9月 | 1988年4月 | |
LSV-3 | ブレホン・B・サマーヴェル大将 USAV General Brehon B. Somervell | 1987年11月 | 1988年7月 | |
LSV-4 | ウィリアム・B・バンカー中将 USAV Lt. General William B. Bunker | 1988年1月 | 1988年9月 | |
LSV-5 | チャールズ・P・グロス少将 USAV Major General Charles P. Gross | 1990年7月 | 1991年4月 | |
LSV-6 | ジェームズ・A・ルー四等特技兵 USAV SP4 James A. Loux | 1994年4月 | 1995年7月 | |
LSV-7 | ロバート・T・クロダ二等軍曹 USAV SSGT Robert T. Kuroda | 2003年3月 | 2006年8月 | |
LSV-8 | ロバート・スモールズ少将 USAV Major General Robert Smalls | 2004年3月 | 2007年9月 | |
フィリピン海軍 | LC 550 | バコロド・シティー BRP Bacolod City | n/a | 1993年12月 |
LC 551 | ダグパン・シティー BRP Dagupan City ※「カガヤン・デ・オロ」より改名 | 1994年6月 |
脚注
注釈
- ^ 1958年、陸軍は全長338フィート (103 m)の擱座揚陸用艀である「ジョン・U・D・ページ中佐」(BDX-1X)の引き渡しを受けて、1959年のNODEX 1959演習において、海軍の貨物輸送艦「コメット」とともに揚陸後方支援活動をデモンストレーションした。このときには、「コメット」のバウ・ランプを「ページ」のスターン・ランプ上に降ろすことで、「コメット」の搭載物資・車両を「ページ」に移動させることができた[7]。
出典
- ^ a b c Saunders 2009, p. 947.
- ^ a b c d e f Wertheim 2013, p. 926.
- ^ a b 吉富 2019.
- ^ Pagonis 1992, p. 64.
- ^ a b Couhat 1986, p. 716.
- ^ Killblane 2019, ch.7 A New Army.
- ^ Killblane 2019, ch.5 Cold War.
- ^ Wertheim 2013, p. 534.
参考文献
- Couhat, Jean Labayle (1986). Combat Fleets of the World 1986-87. Arms & Armour Press. ISBN 978-0853688600
- Killblane, Richard E. (2019). Delivering Victory: The History of U.S. Military Transportation. Emerald Group Publishing. ISBN 9781787546110
- Pagonis, W.G. (1992). 山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略. 佐々淳行 (監修). 同文書院インターナショナル. ISBN 978-4810380033
- Saunders, Stephen (2009). Jane's Fighting Ships 2009-2010. Janes Information Group. ISBN 978-0710628886
- Wertheim, Eric (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World (16th ed.). Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545
- 吉富, 望「LSVとLCUの導入 新たな「海上輸送部隊」の青写真」『世界の艦船』第897号、海人社、2019年4月、108-111頁。
関連項目
- ラニーミード級汎用揚陸艇 - アメリカ陸軍輸送科の揚陸艇(LCV)
- ラウンドテーブル型支援揚陸艦 - イギリス海軍補助艦隊の同規模艦
- デ・ソト・カウンティ級戦車揚陸艦 - アメリカ海軍が建造した最後の艦首門扉方式LST。敵前上陸を想定しており、本級より遙かに大型・高速である
- 陸軍船舶兵 - 大日本帝国陸軍において艦艇の運用を行なった兵種